「データを可視化する目的は、読み手の思考と行動を促すこと。
 それはネットの時代でも変わらない」
 
  NIKKEI DESIGN 2014年9月号から


ネット時代にふさわしい
表現方法が必要に

日経デザイン(以下、ND):インターネットが台頭するなど新しい時代では、インフォグラフィックスとデータビジュアライゼーションを融合させたような、新しい表現方法が求められているのではないでしょうか。
――木村 データを可視化する目的は、誰かの知識になったり、その人がさらに誰かに伝えたりすることで、多くの人の知恵になっていくための「きっかけを与える」ことです。それはインフォグラフィックスでもデータビジュアライゼーションでも共通でしょう。
 ただし、インフォグラフィックスの方が「こう見てほしい」というストーリーが明確であると考えます。例えば、日本経済新聞の連載記事「GLOBAL DATA MAP」で、このシェールガスの生産を題材にしたインフォグラフィックス作成に協力しましたが、単にデータを見やすくデザインしたものではありません。「シェールガスを現在活用している国は少ないが、まだ掘削されていないシェールガスが世界各国に分布しており、その現状から考えると将来は各国が生産に乗り出す可能性がある」というストーリーがあります。それをベースに、地中深くにある岩盤に高圧の水で割れ目を入れて回収するシェールガスの特徴と埋蔵量の膨大さをイメージさせるビジュアルで表しているのです。
 一方で、データビジュアライゼーションは、データの変化や繋がりを見せることで「何かしらの気付き」をもたらすものだと思います。しかし動的に変化させていても、棒グラフや円グラフなどで表現しているだけでは、ストーリー性が伝わりにくい。本来、データビジュアライゼーションにもストーリー性はあるはずです。数多くのデータの中から「このデータは役に立つはず」「このデータと結び付けて可視化したら分かりやすくなるだろう」といった作り手の意図は確実に存在するのですから。
  今後は、そうしたインフォグラフィックスとデータビジュアライゼーションのそれぞれのメリットを生かした表現方法がさらに求められると確信しています。

ND:インフォグラフィックスだけでビッグデータを扱うことはできないのですか。
――ビッグデータを、そのままインフォグラフィックスと結び付けるのは難しいと思いますが、インフォグラフィックスをWebで展開すると考えた場合、データビジュアライゼーションの表現を取り入れることでビッグデータとつなげることは可能でしょう。

ND:インフォグラフィックスとデータビジュアライゼーションが融合することは可能なのですね。
――インフォグラフィックスに携わって約30年経ちますが、求められることは当時から変わっていません。私がこの業界に入るきっかけは地図のデザインですが、5センチ角の小さな案内図を作るときでも一番大切なことは、初めて使う人が迷わず目的に到着できるかということです。必要な目印を厳選して、最もシンプルに整理しなければ、迷わせる地図になってしまいます。そのためには、地図を利用する人と同じ目線や気持ちになって考えることが必要で、それはインフォグラフィックスやデータビジュアライゼーションをデザインする上でも同じです。
 そうした手法を基にネット時代にふさわしいインフォグラフィックスを模索する必要はあると思っています。データビジュアライゼーションを通してビッグデータとも絡んでいくことは、表現の幅を広げる上でも必要なことだと思います。

※上図は日本経済新聞2014年4月21日朝刊制裁の「GLOBAL DATA MAP」

※このインタビュー記事は、日経デザイン2014年9月号に掲載されたものをアレンジしたものです。 2015.5.5